悔しそうに、男は去る…。

取り残されたあたしは、ペタンと地面に座り込んだ。

可愛く、可愛く演じなきゃ…。


『こ、怖かったあー…』


「大丈夫?」


近付いてくる武井翔に、あたしは潤んだ瞳で。
斜め四十五度の…得意な、上目遣い。

絶対、落とせる。
そう、思ってたの。


『助けてくれて、ありがとうー…』


「…ってかさ。
俺、あんたを助けたつもり無いから」


『…え?』


武井翔は、目の前で嬉しそうに微笑んだ。

ありえない。
じゃあ、何なのよ…っ!


「つーかさ?
もっと上手く演技したら?」


『…っ!』


意外だった。
バレるなんて、予想外…。

でも冷静を装って、『何の事?』って。
立ち上がりながら、微笑んだ。


「え?
あー、違うならいいや」


『もうっ!
びっくりしたー。
何の事かと思ったしっ』