時刻は九時前。
もうすでに、真っ暗だ。

灯りのない、暗い道を俺は走り続けていた。


「くっそ!
どこに居んだよっ」


まさか、もうすでに…?

嫌な予感がする。
でも今はそんな事を考えるより、探すのが一番だ。

そんな時だった。
あいつの声が聞こえたのは。


「へーっ。
萌の家、ここら辺なんだ?
一人暮らし?」


『うんっ。
そだよーっ!』


愛内の、柔らかい声が聞こえた。

俺はすぐに、周りを見回す。

すると、小さな公園のベンチに…。

二人が、座っていた。


今すぐ走って行きたかったが、まだ俺は何もしていない。


「なぁ、萌?
今度、家行かせてっ」


『えー?
あたしの家、汚いよっ』


俺には決して見せない笑顔を、あいつには見せる。

そんな些細な事に、胸の奥がムカムカした。