『おはよーっ』


男にも、女にもそう言いながらあいつは笑顔を振りまく。
わざとらしい笑顔。

俺は、廊下側のドアで笑顔を振りまくあいつの隣に行った。


「何してんだよ」


『あ、おは…』


俺と目が合うなり、顔が凍り付いた。

何だ、こいつ…。


『…おは、よ』


言葉をとぎらせながら、目も合わさずに呟いた。

さっきの男や女に対する接し方と、全然違う。
俺、何かした?


「何だよ?」


『何も、言ってない…し』


「じゃあ、何で目逸らす?」


俯く愛内の顎を持ち上げ、目線を合わさせた。
よっぽど嫌なのか、愛内は目を瞑るー…。

こんな女は、初めてだ。


「目、開けろよ」


『やだっ!
触らないで…っ』


パチンと俺の手が叩かれた。
目の前には、震えているあいつがー…。

目に涙を溜めて、唇を噛んで。

『あたしに触れないでっ』ってー…。

そう強く言って、美紗の元へ走っていった。