ドカっと鈍い、痛々しい音がした。

その瞬間、後ろに居た男の腕の力が弱くなった。
あたしは、後ろの男に解放された。


「痛ぇな!
誰だよ…っ!」


「てめぇ、誰だよ?
邪魔すんなっつーの。
今、いいとこなんだよ」


あたしを一番触っていた男は、そう言ってあたしから離れた。

あたしを取り囲んでいた男達は、どんどん視界から消える。
あたしが振り返ろうとすると、耳元で声がした。


「逃げろ」


そう言われ、あたしはピタリと動きを止めた。
この、後ろにいる誰かをおいて逃げていいの…?

誰かは分からないけど…。
いいのかなあー…?


「早く逃げろっ」


次に、切羽の詰まったような声が聞こえて。
背中をトンと押された。

「お前、待てっ」そんな男の声がしたのが怖くて、あたしは全力で走った…。

振り返りも、せずに…。