頭の中にふと浮かんだのは、あいつだった。

武井翔…。


『…どうしてっ?
あの人に似てる、から?』


あんなに最低な事をされたのに。

男嫌いになる原因。
復讐しようと思った理由。
全部、あの人のせいなのにー…。

あたしは、まだ忘れてないの?
もしかして、まだ好きなの?

いくら、初恋だったとしても…。
あんなに傷付いたなら、忘れててもいいんじゃないのー…?


『ふ…っ。
どうして、こ…っな想いー…』


ポロポロと零れる涙は、止まるという事を知らなかった。

綺麗に消し去りたい過去は、消えずに…。
たまにこうして、あたしの古傷を容赦無くえぐる。

忘れたい過去は、なかなか忘れられず…。
似たような場面になると、あたしの涙腺を弱くする。


『…嫌、だよ…』


そう、弱く呟きながら…。
あたしは、眠りについた。