男はブレーキを掛けて、ゆっくり止まった。
あたしはすぐに下りて、歩きだした。

一刻も早く、帰りたかった。
不安で、押し潰されそうだったから。


「ちょっ、萌ちゃん?」


そんな声も完全に無視して、家に真っすぐ向かった。
涙が溢れそうなのを、必死に堪えながらー…。



ガチャリとドアを開け、あたしは家に入った。

『ただいま…』と、誰も居ないリビングに言ってから自分の部屋へ…。

ため息を吐きながら、ベッドへ倒れこんだ。


『もっ…最悪』


あたしは、高級マンションに一人暮らしをしている。

生活費は、毎月親から送られてくるし。
家には全てそろってる。
欲しい物といえばー…。

人の、あたたかさ。


『一人暮らし…普段はいいけど。
今は寂しいよー…』


さっきの男の前で泣くのは、嫌だった。
あんな男に、頼りたくなかった。

じゃあ、あたしは誰に頼りたいの?