トクトクと早くなる鼓動、キョロキョロと動く目。

動揺するな、落ち着いて…。
そうは言うものの、やっぱり鼓動は早くなるまま。


「一つだけ言っといてやるよ」


『え、何ー…っ』


気付けば、武井翔はすぐ隣に居て。

耳の横で「男全員が自分に惚れるなんて思うなよ?」なんて。

囁いてから、怪しく微笑んだんだ。


『…んなっ!』


「じゃーさよなら?
愛内萌さんっ」


楽しそうに、嬉しそうにー…。
教室を、出ていった。

あたしはただ、一人残された教室でポツリとつっ立って居た。


『あいつー…。
武井翔…一体何なのっ』


せっかく変わるって決めたのに。
違う人生歩んでやるって、決めてたのに。

また、後戻りしちゃうのー…?
二度と、あんな思いはしたくないのに…っ。


『怖い、よ…』


そう、ポツリと呟いて。
俯いた…。