広瀬 成。それが彼女の名前。

由乃と彼女は高校が一緒で、同じクラスの同級生だった。

山田由乃は元々人見知りで友達も少なく、クラスではいつも1人で本を読んでいることが多かった。
関わる人といえば、所属していた軽音部の部員と、今も変わらないSSのメンバー3人だけだった。

そんな冴えない彼とは反対に、彼女はその可愛さもあり友達も多く、クラスのマドンナ的な存在だった。
彼女に告白してくる男子は後を絶たなかった。

そんな彼女は由乃に対しても差別なく接していた。

そんなある時、成は2年生の文化祭で初めて由乃の歌声を聴いたのだった。

文化祭は軽音部が唯一活躍できる学校のイベントであり、文化祭が終わった後はクラスで話題になることもあった。その間だけ、由乃の名前が知れ渡ることもあった。
しかし、1か月もするとその勢いは静まり、またいつもの日常に戻ったころのことだった。

マドンナの広瀬成が由乃に話かけてきたのだ。


「山田君、山田君て軽音部だったんだね!私この間の文化祭のライブ観にいったの!」
「…へ…。あ…ありがとう。」

由乃は突然クラスメート、しかも女子に話しかけられ、困惑していた。