「じゃ、私はこのくらいで失礼します!またきますね~!」
といって彼女は早々と帰っていった。

ドアがしまる音がして数秒後、竜太が僕にこう切り出した。
「いや~、成さん今日も可愛かったっすね~」


「竜太それセクハラだから。」
僕はニヤニヤしてしまう口元を手で隠しながらそういった。

「うわ、由乃さん怒ってるよ~!」
続いて嬉しそうに和也がいう。彼らは由乃と成のことになると何かとつっかかってくる。
そして相変わらず紺は寝たままだ。

......。
一通りの茶番はどうでもよいとして。
さっきの社交的な女性こそ、僕が長年恋心を抱いている人である。

しかし彼女ではない。
僕に彼女ができたことはない。
それはバンド活動に集中したかったのもあるし、
ずっと彼女に一途だからでもある。



はたから見たらかなり引かれるかもしれない。
メンバーの皆は長年の付き合いだから受け入れてくれているのかもしれない。

しかし、僕にはそのぐらい彼女に一途になる理由がある。