「葵…。」
呼ばないで。呼ばないで。呼ばないで。
「なんでここに…。」
涙が止まらない。
「誰あの女ー?
なーんか泣いちゃってるよー?
私達のキスそんなに嫌だったぁ?
ってかこいつ誰なの、りゅうちゃん?」
あんたこそ誰なの?
私が言えなかった彼の名前を軽々しく言って…
あだ名で呼んで…
まだベタベタくっついてる。
…気持ち悪い、
吐き気がする。
もう嫌、
一気に冷めた。
私が黙って二人を見ていると彼がこっちに近寄ってきた。
「葵。」
来ないで。
私の名前を呼ぶな。
お願いだからもう顔も見たくない。
「来ないで!!!」
私は手に持っていたマフラーを投げつけてそのまま走った。
振り返らずに走った。