うじうじと心の中で考えているだけでは、何も変わらないし進むこともない。

 信じるか、信じないか。
 その狭間で彷徨っている自分の中にあるもやもやした部分は、自分でしか取り除けないのだろう。

 受け身ではなく、自分から一歩を踏み出すしかないんだ。

 きゅっと固く結んでいた唇を開く。


「……中学生のとき、どうしても、有川くんのことを信じられなかった」


 有川くんが話してくれたことに対して、どんなふうに言葉を返せばいいのか分からなくて。
 代わりに、自分が思っていたことを順番に話す。


「全然タイプが違う私にいきなり関わってくる理由もよく分からなかったし、告白も……ふざけてるとしか思えなかった。でもそのあとに少しずつ有川くんのことを知っていくうちに、ちょっとは信じてみようかなって思えたの」


 有川くんは私の言葉を噛み締めるように、ときどき小さく頷いた。


「……けどね、心のどこかでずっと不安だった。有川くんが今まで付き合ってきた子たちとは私はタイプが違うし、好きな理由さえも曖昧に感じたから。今までの彼女みたいにまた軽い気持ちで近付いてきたのかなって、本気じゃないのかなって、疑問ばかり浮かんだ」


 ――それに、と。言葉を区切る。

 息を吸うとあの頃の苦い思い出が蘇って、喉の奥で詰まるような感覚がした。


「私……見ちゃったの。私に告白してきた日よりもあとに、有川くんが女の子とキスしてるところ」


 冷静だった有川くんの表情が微かに歪む。
 もしかすると、いつのことなのか記憶にあるのかもしれない。

 有川くんが何かを言いかけて唇を薄く開くけど、私はそれよりも先に真情の吐露を続けた。