本音と意地の間で彷徨う私の視線が、有川くんと地面を行ったり来たりする。

 有川くんはそれを、哀愁を帯びた笑顔で見つめていた。


「急にこんなこと言われても困るよな。でも今、どうしても伝えたいって思ったんだ。今でも俺が、……佳乃ちゃんを好きだから」

「えっ……?」


 過去の話ではなく、思いもよらなかった今の気持ちを伝えられて、心が揺さぶられる。

 驚きのあまり、やっとのことで視線が有川くんに定まった。また、真剣な表情に対面する。


「佳乃ちゃんに振られてから今まで以上に色んな子と遊んだり付き合ってきたけど、全然本気になんてなれなくてさ。佳乃ちゃん以上に引かれる人は現れなかった。それで、尚更確信したんだ。俺、佳乃ちゃんじゃなきゃダメなんだって」


 有川くんは自嘲の笑みを口元に添えた。
 そんな彼を見つめる私の顔には、きっと困惑の色が滲み出ているだろう。


「最初から佳乃ちゃんが俺に気持ちがないのは知ってる。今でも……変わってないことも。でも、自分の本心はちゃんと伝えたかった。言わなきゃきっと、信じてもらう可能性すらないから」


 “今でも”という言葉で、有川くんが海辺で聞いてきたことの意味がやっと分かった。


『――俺のこと、好きになった?』


 あれは、私への期待だったんだね。

 じゃあ、私は……どうすればいい?

 気付いてしまった本心。
 だけど彼女が居る有川くんにそれを曝け出せるわけがないと思って、嘘で閉じ込めた。

 でも実際は違って、今でも有川くんは私を好きだと言っている。本気だと、信じてほしいと訴えるように私と向き合っている。

 そんな状態で、私は……。