「どこか行ってたの?」


「ああ、ちょっと」


「あの、あなたが達也さん?」


「呼び捨てでいい。あんたは?」


「あたし、彩」


「変な寮なのに、よく来たな」


「だって……」


あたしは早く、あの家を出たかったの。

今日から素敵な生活が始まるはずだった。


なのに。


“逃がさない”



「どうした?」