「うっ...ふぇっん...」
私のその声に反応したのか、陸の顔が再び出てくる。
真っ赤にそまった陸の顔。
それを見ると、余計泣けてくる。
「りっ...陸...うっ...」
息が詰まる。
うれしくて泣いたことなんて、今まであっただろうか。
こんな顔、見せに来たわけじゃないのに_。
。
目の前が、涙で震えててよく見えない。
そう思った瞬間、
甘い香りに包まれて、目の前が見えなくなった。
暖かい。
陸に抱き締められてるんだと悟った。
幸せだよ。私。
今までの私には、もったいないくらい...。
「俺も、相沢の事、好きになってる。」
再びそう言われた瞬間、私はどれだけうれしかった事か。
甘い香りに包まれて、『元彼女』は、終わった。
。
翌日
ピピピ...
目覚まし時計を止めながら、私はふと思った。
...なんで、昨日の事は、ほとんど覚えてないんだろ...。
えっと、昼休みが終わって、そのあとどうしたっけ...。
まあ、いいや !
どちらにしろ、私たち、
恋人に戻れたんだよね!?
そう思うだけで、顔がゆるむ。
。
私はそのまま、顔を洗いに階段を下りて、洗面所に向かう。
そこで、あることに気付いた。
目、腫れてる。
いつも、ぱっちりとした二重が、今は重すぎる一重。
まさか、昨日泣きすぎた!?
えええ...この顔じゃ、さすがに学校行けないよ。
。
「美帆ー!早く学校行きなさい!」
「無理!絶対に行かない!てか、行けない!」
部屋に閉じこもって、約十分。
お母さんとの言い合いが続いていた。
さすがに、恋人初日で、こんなひどい顔はよけい、無理だ。
いや。他の問題もあるけどさ。
そんな時...
。
ピンポーン
家のインターフォンがなる。
こんな朝早くに、誰だろ...。
ま、いっか。これでしばらくお母さんは静かだろうし。
なんて思ったのもつかの間。
「美帆っ!相沢君が来てくれたわよ!」
...えっ!?
。
あれ。私って陸に家教えたっけ...。
てか、約束してないような...。
って..
「!!!!!!!」
昨日の出来事が、次々思いだしてくる。
。
私、陸に抱き締められた後、
安心しすぎて、寝ちゃったんだ !
しかも、陸の腕の中で...。
今思うと、本当恥ずかし。
あと、ある意味尊敬してくる...。
そのあと、授業した記憶がないんだけど...。
嫌な予感...。
。
記憶をたどると、嫌な予感、的中。
私、家の電話番号は陸に教えてたから、たぶん...
**
「お...はよ。」
私は、結局学校に行くことにした。
顔は、メイクでどうにかした。
「はよ。」
陸は笑顔でそう返す。
笑顔...。
ちょっと、この笑顔も、なんかいやな予感。
。