体育祭当日
「では、みなさん。
今日は、悔いのないように、精いっぱい戦いましょう。」
体育祭の開会式で、わたしはそう話す。
始まるんだ。
いつもは、そんなに考えなかった体育祭。
けど今年は、陸が楽しみでしょうがない。
走る時の陸、
応援の時の陸、
けっこう疲れてる時の陸、
なにもがかっこいい。
あ。私も準備しなきゃ。
。
「相沢くーん♥はい、お茶♥」
「あ、ありがと。」
「あ、これタオル!
男子種目、頑張ってきてねっ♥」
「うん。頑張るわ。」
ハートマークをつけて話す女子たちに、淡々と応える陸。
急に不安になった。
女子たちがじゃない。
あれほど嫌がっていた女子たちに追いかけまわされること。
それを防ぐために私とうその付き合いをした。
けど、私と別れることによって、また、嫌がっていた女子たちに追いかけまわされることになる。
そんな嫌な事が待っているのに、私と別れたって言うことは
そんな女子たち以上に、私を嫌いになった。
ってことなのかな...?
。
「っ...。」
急に、涙が出てきそうになった。
分かってる。そんなこと考えたって無駄なことくらい。
私は、変わるんだから。
けどね、考えられずにはいられないよ。
せめて、陸。
陸から私に一言でも声をかけて。
そしたら私、安心できるの。
大丈夫だって。
嫌われてないんだって。
。
陸side
-少し前に戻って、体育祭前日-
...教室に、見覚えのある後姿。
俺が見間違えるはずない。
けど、なんで ...?
「...なんか、用?」
俺は、恐る恐る問いかけた。
よく考えたら、俺が藤谷の用事の相手か分からない。
なのに、今の言い方。
俺に用事があってきたみたいじゃん。
違ったら、はずかし...。
俺、こんなに自己中だったっけ...。
。
ゆっくりと、彼女は振り返る。
「陸...。」
少し、驚いているような顔。
俺、迷惑じゃないかな...。
急に心配になる。
。
「あ、いたいた!相沢君!
会長が用事あるんだって!」
クラスの女子が、そう言った。
一瞬、安心した。
けど、何を話したらいいんかが、分からない。
こんなこと、今までに一回もなかった。
やばい,,,。
。
沈黙が続く。
どうしよう...。
なんか話すか...?
でも、藤谷の用事ってなんだ ...?
俺がうじうじ考えてる中
「あのさ、これ。ゼッケン。明日のリレー用。」
藤谷がそう言った。
「ああ。さんきゅ。」
俺は、ぶっきらぼうにそう答える。
素直じゃねえ奴...。
。
また、沈黙。
俺って、本当小さいやつだよな...。
「あの...さ。」
藤谷がそう切り出した。
「何?」
ああ。この俺どうにかならいかな...。
「明日、頑張ってね。」
「当たり前じゃん。」
心臓が破裂しそうだった。
まさか、『頑張って』なんて、聞けるなんて。
。
そのあとも、おれたちは少しずつ話した。
けど、俺も藤谷も、堅い...。
あのころに、戻りたい。
俺が、すべて壊してしまったのかな。
よし。
俺は決めた。
次は、壊れないように。
大切に。
体育祭が終わったら、
好きだ。と、伝えよう。
。