体育祭1週間前
あ、リレーの練習やってる。
もちろん、陸もいる。
運動神経は、たぶん学校一だろう。
かっこいいな。
もう、あれ以来言葉も交わしていない。
最初はあんなに嫌だった日々が
いつの間にか、愛おしい。
あの態度も、すべて私だけが知ってるのに。
私だけなのに。
私...だけ...。
。
私は特別だと思ってた。
なのに、きっと今じゃ、一番陸から遠い人だろうな...。
陸、私後悔してるよ。
あの時、あんな口調で言わなければって。
誰だって、あんなこと言われたら、嫌だよね。
私、陸のおかげで、本当の恋を知れました。
気付けば、陸中毒。
もう、抜けだせないよ。
だからね、私
「変わりたい。」
_あなたの、『彼女』になれるように。
。
体育祭前日
私たち生徒は、すごい盛りあがりよう。
3年生なんか特に、最後の体育祭。
絶対負けるか-!
なんて騒いでる。
私だって負けたくない。
陸とは、同じ団だ。
また、歩き始めなきゃ。
リレーみたいに、速くなくていいから、
ゆっくりでも、確実に。
あなたに近づいて見せる。
。
「美帆っ!このゼッケン、6組に持って行って!
選抜リレー用だから...。」
「おっけー。分かった。」
クラスの子に、そう頼まれて、私は6組へと向かう。
選抜リレーって事は、選手の子に直接渡さないと...。
...誰だっけ...?
。
「6組か-」
ま、教室まで行って呼んでもらうか。
なんて言ったりしてると、教室の前まで来てた。
私は、教室のドアの近くにいた女子生徒に、選手の子を呼んできてもらうように頼んだ。
すると、廊下側から、聞き覚えのある声がした。
「...なんか、用?」
_この声、まさか ...?
私は、その人の顔のほうに振り向く。
やっぱり。
。
「陸...。」
そういえば、陸って6組だったよね。
「あ、いたいた!相沢君!
会長が用事あるんだって!」
さっき呼んできてくれるように頼んだ女子生徒の子がそう言った。
最悪で、最高のタイミング。
まるで、私たちの出会いみたい。
。
さっきの女の子は、教室に戻って、友達とおしゃべりを始めた。
そして、なんとなく気まづいこの空気...。
けど、止まってちゃいけない。
進むって決めたんだから。
。
「あのさ、これ。ゼッケン。明日のリレー用。」
「ああ。さんきゅ。」
「「...。」」
黙りこんでしまう。
さきに、この沈黙を破ったのは...私。
。
「あの...さ。」
陸は、表情を変えずに応える。
「何?」
「明日、頑張ってね。」
「当たり前じゃん。」
「絶対、1位になってよ!
学生最後の体育祭なんだし、負けたくないじゃん?」
「俺が誰かより遅いと思うか?」
「あ、何それ-!
どんだけ自己チューなのよ。」
「え。だって事実だろ?」
私たちは何もなかったかのように話している。
周りから見ればそんな感じ。
けど、私たちはお互い分かってる。
お互い、すごい緊張してる。
それに、言葉がぎこちない。
。