最悪彼氏×最悪彼女




「あ、あと陸 って呼んでよ。
 彼女なのに、呼び方が不自然じゃ怪しいじゃん♩」


「...この関係のほうが、よっぽど怪しいって。」



淡々と答えてく私に、こいつ_陸は


「じゃあ、本気でなっちゃう?」




真面目な顔で、呟いた。



...へ?




「何言ってん...っ ! 」



ドサッ


昨日のように、陸は私を倒して、私の上にかぶさってきた。



「恋人なら、キスしちゃうとか ? 」



ドクンッ...



おもわず、鼓動が速くなった。

少なくとも、顔はいい。
だから、こんな顔で、そんなこと言われたら...。



いつもの爽やかさも、悪魔のような顔とは違い


ちょっと、見とれてしまう。
色気があるような顔...


反則だよ。




「...くくっ」


突然、陸が笑いだした。


「何本気になってんの?
 残念だけど、キスはできないな~♩」


いらっ



「なっ...別に本気になってないし!
 誰が陸となんか、キスするかよ!」



...そう、むきになって言っちゃった。


「あ。」



急に、陸がそう呟いた。


「は?」

思わず、聞き返す私。


「『陸』って呼んでくれてんじゃん。
 さんきゅ。」


ドクンッ


...まただ。


急にそんなふうに、表情変えないでよ。
反則しまくりだよ。


だめだ。


好きになってるよ。




私が誰かを好きになるなんて

ありえないと思った。



ましてや、あんな最悪な、猫かぶりのやつなんか。




出会った時は、そんなこと思わなかった。

けど、もう遅いよ。



好きだよ。


けど、言えないよ。



私たちの関係は、嘘だらけ。

罪だらけ。




ねえ、お願い。


神様は、最悪な彼女を、見捨てないでくれますか_?




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「会長!これ、ここに置いておいていいですか?」


「ああ...。うん。そこに置いておいて」



すっかり陸と付き合ってることは
みんな了解済み。


前のようにめんどくさい告白も、お互いなくなった。



けど...



最近、陸とあえてない。




私だって忙しいし、陸だって忙しい。


それに、私たちは本当の恋人でもない。


だから、毎日会う必要も、ない。





けど、


悲しいよ。

だって、私は好きなんだもん。




「...。」



むしゃくしゃしてきた。


陸にあえてないせいで、陸不足。
あんなに、最悪な奴だったのに...


いまじゃ、自分が恥ずかしいよ。

こんなに、陸中毒になってるなんて。




陸のせいで、食事も睡眠もまともに取れてない。
私の事は、用済みだから、いらないのかな


とか


考えちゃう。


おまけに、体育祭が近づいてるせいで、生徒会の仕事も多い。


あーあ...。





ぐらっ...


ん?
めまい?


その瞬間、私の体は、床に押し付けられる。


「キャー ! 会長!」
「大丈夫ですか!?」
「先生っ...誰かっ!」


周りがそんなことを言ってることさえ、気付かない。


みんな、どうしてそんなに慌ててるの?
何で声を出さないの?


なんて思ってるうちに、私の意識は途切れた。





「ん...。」


白い天井...


見おぼえがある。
確か...



「保健室っ!?」

驚いて、私は布団から跳び起きた。


なんで自分が寝てたのか。
しかも、保健室で。


全く身に覚えがない。