「隼人...。」
「ん?」
「別れてください...。」
隼人は、黙ったままこっちを見る。
。
「私が言うのもおかしいけど...。
やっぱり、気付いたの。陸が好きなんだって。」
「うん。」
「だから、こんな気持ちで隼人とは、一緒にはいれないし、隼人は、私を幸せにしちゃダメだよ。けど...」
「けど?」
「隼人といた時間は、幸せだった。ありがとう。」
涙が出そうになった。
何て自分勝手なのだろう。
けど、これは本当の気持ち。
。
隼人は、その言葉を聞いた時、笑った気がした。
「ありがと。その言葉のおかげで、ちょっとは救われた。」
隼人は、いたずらな笑みを浮かべて笑う。
「ふふっ。ありがと。」
気付かないふりをしたけど、
その笑みには、少し悲しそうな表情があった気がするのは
たぶん、本当だろう。
ありがとう。隼人。
。
教室に戻ると、絢が登校していた。
来れるか心配だったけど、よかった。
「絢。」
私は、絢を呼ぶ。
。
「話しがあるんだけど...。」
私が言おうとした瞬間_
「陸とは別れたよ。」
絢にそう言われた。
。
「え...?」
「お互い、限界だったと思うの。私も、陸も。」
「それに、私は陸の隣にいるべき人じゃないから。」
絢に言おうとしていた言葉が、頭から消えていく。
最初からなかったかのように、あとかたもなく_。
。
「美帆。陸のところ行くつもりでしょ?」
「えっ...」
ドキッとした。
何もかも、見透かされているようで。
「美帆は、自分を追い詰めすぎ。もっとわがままになってよ。私がしていたことのほうが、間違いなんだから。」
「絢...。」
絢、大好き。
そう言うかわりに、私は絢に向かって、笑顔を見せて、
絢も私に笑顔を見せて、
私は陸のもとへ向かった。
。
私って、すごい幸せじゃない?
周りにこんなに暖かい人がいる。
前の私なんて、自分のことしか考えてなかった。
守ろうとするものなんて、なかった。
いまじゃ、守りたいものがたくさんあるよ。
ありがとう。
。
「陸っ!」
陸の教室の前で、大声で呼んだ。
周りの人もびっくりしてるみたいで、
自分でもびっくりした。
。