最悪彼氏×最悪彼女




ひとつ、深呼吸をして、隼人の顔を見る。



正面から。



「隼人..昨日はごめん..なさい。」

「大丈夫だから。相沢君は、大丈夫だったの?」

「うん。なんとか...。」


言わなきゃ。






「隼人...。」


「ん?」


「別れてください...。」


隼人は、黙ったままこっちを見る。



「私が言うのもおかしいけど...。
 やっぱり、気付いたの。陸が好きなんだって。」


「うん。」


「だから、こんな気持ちで隼人とは、一緒にはいれないし、隼人は、私を幸せにしちゃダメだよ。けど...」


「けど?」


「隼人といた時間は、幸せだった。ありがとう。」



涙が出そうになった。

何て自分勝手なのだろう。


けど、これは本当の気持ち。





隼人は、その言葉を聞いた時、笑った気がした。


「ありがと。その言葉のおかげで、ちょっとは救われた。」



隼人は、いたずらな笑みを浮かべて笑う。


「ふふっ。ありがと。」



気付かないふりをしたけど、



その笑みには、少し悲しそうな表情があった気がするのは


たぶん、本当だろう。


ありがとう。隼人。




教室に戻ると、絢が登校していた。


来れるか心配だったけど、よかった。




「絢。」


私は、絢を呼ぶ。




「話しがあるんだけど...。」


私が言おうとした瞬間_



「陸とは別れたよ。」


絢にそう言われた。




「え...?」


「お互い、限界だったと思うの。私も、陸も。」


「それに、私は陸の隣にいるべき人じゃないから。」



絢に言おうとしていた言葉が、頭から消えていく。

最初からなかったかのように、あとかたもなく_。






「美帆。陸のところ行くつもりでしょ?」

「えっ...」


ドキッとした。
何もかも、見透かされているようで。


「美帆は、自分を追い詰めすぎ。もっとわがままになってよ。私がしていたことのほうが、間違いなんだから。」


「絢...。」



絢、大好き。

そう言うかわりに、私は絢に向かって、笑顔を見せて、


絢も私に笑顔を見せて、


私は陸のもとへ向かった。





私って、すごい幸せじゃない?


周りにこんなに暖かい人がいる。




前の私なんて、自分のことしか考えてなかった。



守ろうとするものなんて、なかった。


いまじゃ、守りたいものがたくさんあるよ。




ありがとう。