「私、知ってて黙ってた。美帆が本気であんなこと言うはずないし、なにより...。」
そこで、絢の言葉が途切れる。
「美帆..あの時いたよね。陸と私が話してるとき。」
絢の口から放たれた言葉が、私の心臓に深く刺さった。
『あの時』なんて、言わなくても分かる。
。
「知ってたからっ..余計あんなこと言ったの。
美帆の事、大事だったよ。だけど...その反面邪魔だったの..。」
私の頭の中で、絢の言葉が繰り返される。
「私のほうが、美帆なんかよりも好きだったっ..。
お姉ちゃんの事もあったし..。
だから、あの時、チャンスだって思ったの。」
そこで、私は絢のほうへ振り替える。
逃げちゃだめだ。
絢の言葉を正面から聞かなきゃ。
そう思った。
。
さっき見た絢とは違い、もっと涙がこぼれおちていた。
「だけどさ、やっぱ私にはダメだったの。」
絢は悲しそうにつぶやく。
「それどころか、追い詰めちゃった..」
「絢..。」
久しぶりにこんな気持ちで発した言葉だった。
。
あの後、絢は私に話してくれた。
でも、一つだけ絢は間違ってると思うの。
陸をこんなに追い詰めたのは、絢じゃない。
私。
。
絢side
突然、かかってきた電話だった。
携帯の画面には、『陸』の文字。
いつもと同じように、電話に出る私。
だけど、相手は、陸じゃなかった。
。
『こちら警察のものですが。』
電話から聞こえた声。
一瞬わけがわからなかった。
「え..?」
『警察まで来てほしいのですが..。』
そこから聞かされた事実。
私はそこで、電話を切った。
。
陸は、突然人を殴ったらしい。
けが人一人。
幸い、軽いけがで済んだようだった。
だけど、もうひとつ。
陸は、3週間ほど前からクスリを使っていたらしい。
陸の精神状態は、むちゃくちゃだった。
学校ではそんなそぶり見せなかった。
それに、見ていなかった...。
。
言われてみれば、最近陸がおかしかった。
妙にいらついていたり..。
だけど、きっと私は、見て見ぬふりをしていたんだろう。
『陸と一緒にいたい』
それしか考えていなかった。
。
そこでようやく気がついた。
私じゃダメなんだ。
だから私は、美帆に連絡した。
なんて人任せなんだろう。
だけど、救えるのは悔しいけど、
美帆しかいない。
絢side 完
。