~ S高校 3年 4月 始業式 ~

 
「生徒会長の、藤谷美帆( ふじたにみほ )です。これから1年間、よろしくお願いします。では~...」


―あーあ。めんどくせー。
 何で私がこんなことやんないといけないの。
 

藤谷美帆、S高校3年生。わけあって、生徒会長やってます。



きっかけは、簡単な事。





去年までこの学校は、最悪最低高校。進学率大幅ダウン。



その上、生徒会なんて、誰もが真面目にやらない。




好き放題やりたい不良たちが、生徒を脅して生徒会に入るだけの





名前だけの「生徒会」






それを止めるために、この私が、生徒会長をやっている。


理由が見えない人のために、もう少し詳しく説明をしてあげる



私は、誰もが認めるほどの「美人」






_つまり、この、美人生徒が、生徒会トップになっるおかげで、誰もが私に従うようになる。

 
 いわゆる、他の生徒は私の奴隷なわけで
 
 私は先生たちに、いいように扱われている、美人生徒会長。






もちろん、裏の顔なんて、誰も知らない。



一生知る人はいない。



_そう、思っていた。



新学期が始まって、1か月。



私は、いつものことのように、昼休みは裏庭へと向かう。


「好きです。付き合って下さい。」

「ごめんね。私今は、学校のことで頭がいっぱいだから...」




こんなやりとりも、日常茶飯事。


つまんない。



せめて、もう少しましな奴でも、告ってこないかなー。


そして、いらつく私を納めるのは_タバコ。



もちろん、こんなことをしているなんて、


世界中だれ一人として知るわけないだろう。





だって私は、美人生徒会長。性格よし、成績よし。



完璧だと、誰もが思っているだろう...



「ふうっ...」

そう言って、煙を吐き出す。



いらいらしていた体も、
少しずつ、おさまってくる。



この小さな棒のようなものに、これだけの効果があるなんて...
なんて思ったりまする。




もちろん、現実はそうじゃないことも、やってはいけないことだとも、

もちろん知っている。




けれど、私にはそんなの関係ない。




関係ない...とばかり思っていた。



まさか、このせいで、私は今までにない屈辱を受ける。




けれど、この、[やってはいけないこと]のおかげで、
私は正しい道へと歩くことができたのかな。

どちらだっていい。
私は、きみに出会えたんだ。




ありがとう。


私、変わりたかったんだ。



「お前、何やってんの?」

私は、おもわず、声のした方向に振り向く。


そこには、どこかで見た覚えがあるような、男子生徒。

「お前、あの生徒会長か?」


ちっ...。


私は、心の中で、そう呟いた。

「そうだけど。あんた、誰?」



ばれたんなら、もう猫かぶる必要はない。


だけど、これが他の人に知れ渡ったらまずい。


「俺は、相沢陸(あいざわりく)。
 って、その前に、お前...なにやってんだよ。それ。」


「それ」なんて、言われなくても何が言いたいか、分かる。


迷う必要もない、この、タバコだろうな。




「ああ、コレ ? 」

私はあきれたように言う。

「だってさ、つまんないんだもん。

 男はクズばっかだし、会長はめんどくさいし、なによりも、いい女演じるの、たいへんなんだから。」


そう、私はそいつ_相沢陸に、説明(?)した。



「...ぷっ...」


え。こいつ今笑った!?



さっきも思ったけど、こいつ、どこかで見たことあるような...


なんて思った瞬間...