今日は日直だ。

学級日誌を持ちに行った職員室から出ると、
友達のコハルが階段から顔を覗かせている。
「アキー!! 次、移動教室だよ!!」
「え!? ちょっと待っててー!!!」
慌てて教室に向かおうとすると、
「教科書、ノート、筆箱の3点セットなら
ここにあるよ~♪」
コハルが持ってきてくれていた。
「わーい!!
コハルありがとーっ!!」
階段を駆け下りる。

コハルに駆け寄ろうとしたら、
左からぬっと現れた黒い影とぶつかった。

「いったー!!」
おでこをさすりながら相手を見ると、
「えっ…」
「なんだよ、そんな嫌そうな顔するなよ」
幼なじみのケイタだった。
「嫌な顔なんてしてないよ!!」
「眉間にシワがー」
「うそっ!?」
鏡を取り出すと、ケイタが急に笑いだした。
「うそだよ。
アキってほんとに騙されやすいな。
将来、詐欺に気をつけろよ」
「あーもう!!
なんでいっつもひっかかるんだろう。
ケイタって、まさか、
詐欺師になろうとしてるわけじゃないよね??」
「もーっ!!
ふたりとも、言い合いはそのくらいにしないと!!
授業が始まっちゃうよ」
お互いが前に出たところで、
コハルに止められた。
「明日は、
ぜーーーったいにひっかかんないからね!!」
宣戦布告して背を向けると、
「明日はどんなネタにしようかなー」
わざと聞こえるようにつぶやく
ケイタの声が聞こえた。
きっとやつは、
今こっちにすごい顔を向けているんだろうな。

「アキ~。
こんなんでいいの~??」
教室に向かう途中で、
コハルがつぶやく。
「いいのいいの!!
突然変に意識して、
今みたいにいられなくなるのもいやだし」
言い訳のようにつぶやく私に向かって、
コハルは納得がいかない顔をしている。

それでも、
これでいいんだ。

自分で決めたことだから。