私は化粧室で顔を直した。

プレゼンまでまだ30分ほどあった。

係長はデモルームで資料に目を通していた。

私は通路をぶらついた。

ポーン、という音がしてエレベーターが上がってきた。

午後からの他社の人達かしら?

見るともなしに目を向けた。

「省也?」遠目でよくわからなかった。

スラリとした背の高い美女と肩を並べてこっちへ歩いてきた。

二人はファイルを開いて何やら話していた。

「じゃ、君は資料を配ってくれないか?」省也の声だ。

「わかりました。」美女はデモルームへ入っていった。

私は彼女のモデルのような後姿を目で追った。

「沙月?突っ立ってないで中へ入れよ。

俺は視力がいいからな。おまえだとすぐにわかったぜ。」

省也はすれ違いざまに小声で私につぶやくとサッと中へ入った。

省也がプレゼンに来るとは。

私はその場で呆然とした。

確かうちの社の次はN社とS社だ。

どっちかしら?