この二人の間には、誰にも言えない秘密があるんだと、

薄々気づいていた。

それでも、美緒は何も話してはくれなかった。

…僕が、『仮』の彼氏だからだ。


・・・でも、僕は本気で彼女を好きだ、いや愛してる。


だからこんなにも腹が立つんだ。


無表情のまま、彼の前に立つ。

「…言いたい事があるなら、はっきり言えよ」

「・・・・」


「・・・何?オレには言えないって?」

そう言ってバカにしたように笑った。

そのせいで、完全に理性は吹き飛んだ。


静かな専務室の中、殴る音が響き、彼は倒れこむ。

殴られたせいで唇の端が切れたようだ。


「…美緒さんは、僕のモノです。金輪際、指一本触れさせはしませんから」

「…美緒の気持ちが揺らいでも・・・か?」


「・・・何事?」

沈黙の中、美緒が目を覚ました。