驚いている僕に、社長はすべての事情を話した。

宮路社長が出した条件。

僕たちの関係。

美緒の性格を考えると、この選択肢しか残っていなかったと。

自分の事より、周りの事しか考えない美緒らしい答え。

でも、それがどれだけ美緒を苦しめていたか。


苦しむ彼女を救い出せるのは、僕しかいないと。

意地っ張りな彼女を取り戻したいなら、今すぐフランスへ飛べと。



「須藤…すまなかったな。

早く気づいてやれなくて…」

そう言って、社長は困ったような顔をした。


「…社長は、美緒さんの事・・・」

そう、社長は、美緒さんの事が、好きなはずなのに。

なぜ、僕を行かすのか・・・?


「美緒が、自分にちっともなびかないしな?

…好きな女が苦しむ顔を見るくらいなら、幸せな顔を見る方が、

男としてこんなに嬉しい事はないしな」

そう言って、社長は微笑んだ。

・・・男らしいと言うか・・・

僕に、社長と同じことをしろと言われても、

出来ない芸当かもしれない。

社長だからこそできる事だと、その時思った。