「あゆみちゃんは、俺のどこを好きになってくれたのかな。」
彼はいたって冷静だった。
男にしては長い睫毛を伏せながら、ひとつの焦りも無い声で、優しく発した。
まるで、告白という場には相応しくないほどの落ち着き様だ。
そんな彼の姿を見てあゆみはあまり居心地が良くなかった。
あゆみは、風で乱れた前髪を分け目にそって分けながら恥ずかしそうに彼の足元を見ていた。

ところで、あゆみは彼のどこが好きなのだろう。
やっと、彼の言葉を頭で処理できたのだ。
告白というような場面では気が動転しすぎて、頭が上手く働かないのだ。
あゆみはひどく騒ついた。
その質問はあゆみにとって衝撃的だったのだ。
「その、あの、先輩はいつもプレーのときとか、びっくりするくらい落ち着いてて、冷静で、すごいなって、、
いや、あの、優しい所とかもすごく素敵だなって、、」
自分でも何を言ってるのかわからなかった。あゆみはもう前髪など、気にしていられなかった。