「二十歳になったばかりで、そんなの一人で抱え込めるわけないと思った。だから、やめたほうがいい、って言ったんだ。そしたら、大丈夫、って笑ってた」




大丈夫なわけがない。

そんなの、話を聞いている私でもわかる。




「何でそんな風でいられるのか、って聞いた。そしたら、一言だけ。『俺を支えてくれる人がいるから』って。それが湊をこんなにも強くしてるんだ、って思った。それで、どんな人なんですか、って聞いたんだ」




圭都さんは笑った。

とても優しい顔をして、笑った。




「お前だよ。『俺にはかけがえのない家族がいるから』って」




家族。

そうだよね。

私たちは『家族』なんだから。




「どう考えても、家族って口ぶりじゃなかったけどな。その人がいれば何があっても大丈夫、みたいな言い方だった」




湊の中で私の存在がそんな風であれたら、と思っていた。

きっとその頃は、まだ湊への恋心を自覚したばかりだったのに、湊はそんな風に私を見てくれていた。




それが、どれだけ大変だったのか。

今ならわかるのに。