――――――コンコン――――――




夜中に部屋のドアが叩かれた。

この時間に私の部屋に来るのは、湊しかいない。


ベッドから起き上がって、そっとドアを開ける。

部屋はキャンドルの光しかなく、揺れる明かりが湊を照らしていた。




「今、いい?」




遠慮がちにそう言うと、そっと部屋の中へ入ってきた。

湊はとても満足そうな顔をして、じっと私を見つめていた。



二人でベッドに腰掛けて、窓の方へ目を向ける。

静かに降る雨は、余計な音を消してくれていた。




「どうかした?」


「いや。時雨の顔が見たくなったから」




部屋の中で、湊の声ばかりが響く。

ベッドのすぐ近くで揺れているキャンドルから、薄いシトラスの香りがする。

揺れる炎が、雨の流れる窓に映る。

時間の流れがとてもゆっくりとしていた。




「湊、ありがとう」


「ん?」


「私、何も知らなかった。お父さんのところに逢いに行ってくれてるのも、ママを連れて行ってくれてたことも」




結局、私は自分で何とかすることが出来なかったのだ、と知った。

二人のことなのに、湊にばかり任せてしまった自分が、とても情けなくなった。