とくとく、と注がれる透明の液体を見ていた。

ふっ、と小さく息をはいて、お猪口をカウンターテーブルに置く。

綺麗な木製のカウンターは、少し白っぽい色の木目が印象的だった。




「山本君の誰にも無関心な表情に、惹かれたこともあったわ」




水鳥さんは、何でもない、という風に私に言った。

そして、申し訳なさそうに私を見つめていた。




「大学二年の夏頃、かしら。山本君、学校の中でとても人気があってね。年下に興味はないんだけど、たまたま見かけたのよ。空き教室で、じっと窓の外を眺めるその人を。ものすごく真剣な目をしていたわ。覚悟を決めた、目を。二十歳の男の子の目じゃなかった」




大人びた顔をしていた湊を想い出す。

何かを背負っているんだな、と想ったことも。




「気付いたら声をかけていたの。何をそんなに真剣に見ているの、って」


「湊は、なんて答えたんですか?」


「にっこり笑って『何も』とだけ」


「え?」


「とても綺麗な顔で笑って言ったの。『貴女に言う必要のないことですから』って」




水鳥さんが楽しそうに笑う顔を、私はとても間抜けな顔で見つめていたのだろう。

開いた口が塞がらず、水鳥さんに向かってそんな暴言を吐いた湊に対して、少しだけ尊敬の念も湧いた。