「もーらい」
悪戯に笑う。
そして、慣れたようにソレを、吸い始めた。
煙草を挟む指先が、妙に色っぽい。
「よく吸うの?」
「いやー女の子が吸うようなのしか吸えないかなー」
「吸うんじゃん」
「ふふ、だねー」
ほんわかとしたその口調に、思わず何だそれ、とツッコミたくなるけど、不覚にも癒された。
いつの間にかタメ口になってるし。
それにしても、意外と煙草、サマになってるな。
紫煙を吐く薄くてきれいな唇も、整ったその、横顔も全部。
見たことないほど、大人びていて、目が離せなくなる。
「あ、今見とれてたでしょ、宮内さん」
「えっ!?」
「あははっ、可愛いー」
私なんかより矢野くんのほうがずっと、可愛いと思う。
顔を覗き込んできて、意図も簡単に頬に触れて、笑って。
ズルイ。
そんなふうにしたら、私ばっかりがまた、惹かれてしまうじゃないか。
「あ、そろそろ戻んないと」
「・・・ああ、」
「じゃーね、宮内さんっ♪」
矢野くんは、まだ吸いかけの煙草の火を揉み消して、立ち上がる。
ひらひらとゆるく振られた手に合わせるように、私も手を振り返したら、妙に甘酸っぱくて、恥ずかしい気持ちになった。
自分が自分じゃないみたいで気持ち悪い。
灰皿に残された中途半端な長さの煙草を見て、ああ、間接キスしてしまったと、ぼんやり思った。