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忙しさが落ち着き始めた頃、先輩に休憩に行くよう、言われた。
忙しすぎて見ている余裕がなかったけれど、いつの間にか矢野くんの姿がどこにもない。
先に休憩に行ったのか。
だとすれば、話すチャンスがあるかもしれない。
喫煙スペースをちらりと覗くと、早速矢野くんの姿を見つけた。
煙草を吸うのか、意外だな。
なんて驚いていたけれど、彼はただ、一人で携帯を弄っているだけだった。
「矢野くん?」
「・・・・あ、宮内さん!」
携帯の画面から目線を上げた矢野くんの顔が、ぱっと輝いた。
そして、人懐っこく笑って、「ここにいれば来るんじゃないかと思って、待ってました!」なんてまた、さらっと勘違いするようなことを言ってのける。
少し、サイズの大きいベンチコートが、より彼の可愛らしさを引き立たせていて、胸がぎゅっと締め付けられた。