「その後、僕の下宿に行く。

良いよね?」

この一泊旅行の最大の目的はそれだった。

「うん」

由貴はしっかりと雄一の目を見て頷いた。


雄一と一緒に頬張った味噌カツも、名古屋テレビ塔から見た夜景も、なんだか上の空だった。

雄一の居る名古屋へ一泊で出掛ける。

そう美亜に告げた時、決心はついた筈だった。


「一緒に下着、買いにいこう」

美亜に付き合って貰って、新しい下着も買い揃えた。

白いレースに小さな小花をあしらった、清楚なデザインのブラとパンツ。

「大丈夫、誰でも必ずバージンは捨てるものだもの。

それが大好きな相手なら、凄く幸せなことだよ」

美亜に励まされて納得した筈だった。


それでも、一歩前に進めば、それだけ別れの時が早く訪れるんじゃないか。

由貴はそんなことを恐れていた。

ありのままの自分を見せた途端、雄一が落胆して去っていくんじゃないか。

由貴はそんなことを心配していた。

愛されることに慣れていない自分が、本当に人を愛することができるのだろうか。

由貴は何度も何度も自問自答した。


——それでも雄一が好き。


だから由貴はここに居る。