「亜里寿、あなたは幸せだった?

……、なわけないか。

質問を変えるわ。

亜里寿、あなたは今幸せ?」


墓前に花を添え、幸恵は一人ごとのように呟いた。

答えを求めたのは、ただ楽になりたいからだとわかっていた。


あの時、亜里寿の苦しみに寄り添えなかった自分。

娘を一人置き去りにした負い目。

息子に罪の意識を背負わせたてしまった遣る瀬無さ。

その全てから逃げたかったのだ。


亜里寿が、死を選ぶことで心の平安と幸福を手に入れたのだとしたら、自分達の背負う苦しみにも少しは意味があるのかもしれない。

そんな自問自答が欺瞞だということは百も承知だ。


亜里寿のいない今、答えは宙に浮いたまま幸恵に帰ってはこない。

母としての幸恵は、娘の幸せを祈り続けることしかできない。