「春菜」
その低い声で呼ばれるたびに、まだ耳まで赤くなる。

「大丈夫?」
大丈夫です。仮病ですから。

そうとは知らず
菅原君は横に座り
心配そうな顔で私を見つめる。

ちっ……近い。

「熱は?」
大きな手が私の額を触る。
そこだけ熱くなってきた。

「少しあるんじゃないか?」
それは菅原君が触っているからです。

固まってカチンコチン状態の私。
突っついたら転がりそう。

「寝てなくていいの?風邪ひいた?」

「うん。大丈夫」
ごめんなさい。嘘なんです。

「帰り送ってく」

「いいよ。今日はみんなで遊ぶ約束してるでしょう。私は大丈夫だから。部活休んでまっすぐ帰るから」
楽しい金曜日
菅原君はとりまきに誘われていた。

「送る」
強く言われて立ち上がり
私の頭を撫でて行ってしまった。

心配かけてごめんね。

それよりこっちだ。
クミンはまだ泣き止まず
私は見守るしかできなかった。