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「……待ってよ!

……ねぇ、なんで懐中電灯持ってないの?」


「あ゛ぁっ!?」


「暗くて怖いじゃん……てか、なんで怒ってんのよ……」


少し前を足早に歩いていた雄仁の足が止まり、

───あたしの鼻先をつまんだ。



「おまえなぁ……アホか!

そんな面してサークルに来るから、俺が連れ出してやったんだろーが!」


「そんな面って……どんな面よ! なんか失礼なこと言ってない?」


「自覚ないのか? 重症だな。鏡見ろよ」


「───……」


正門近くでの、そんな喧嘩ごしのやり取りは目立ってしまい、

門を出入りする学生達が何事かと振り返っていく。



「なんで、おまえこんななんだよ………

……しょーがねーなぁ、ついてこい」


顎でクイッと合図すると、また先をズンズン歩いていく。


いつもは2~3言は反論するあたしだけど、

今日ばかりは黙って後を追った。