「人聞きの悪い……」
声の主がすぐに分かったあたしは、短く答えつつ、そちらへ近づいていった。
同じサークルで、1学年下の本間雄仁(ホンマ ユウジン)が、
側までやって来たあたしの頭をこづく。
「痛いなぁ……先輩様に何するの」
「おまえ、ここ最近ずっとおかしいんだよ。あんま皆に心配かけんな」
………あたしの周りの年下は、なんで皆、あたしをこういう扱いするんだろうか。
まぁ、こいつは誰に対してもこんな感じなんだけど。
「ふんだ。あたしがおかしいのは、どうせいつものことなんでしょ。
変態雄仁に言われたかないよーだ」
「……なんだよ、感傷に浸って。おまえ、失恋でもしたの?」
あたしの憎まれ口を軽くスルーして、そんなことを言う。
「感じ悪いなー。あたしだって、桜を愛でたいお年頃だっつーの」
人を全く年上扱いしない雄仁が、
「おまえ、バカじゃん」と、もう1回あたしの頭をこづく。