────夜。

毎年、満開の桜の下で、それぞれのサークルが新入生を交えて、お花見宴会をすることが、恒例になっている。


桜の開花が記録的に早かった今年は、大分散ってしまっているものの、
学生達の盛り上がりには関係なさそうだ。


街灯に照らされて、浮かび上がる夜桜……あの夢を思い出させる。


あたしはぼんやり佇みながら、散りゆく花びら達に手をかざしていた。


また、「サボってる」って言われちゃうな……と思いつつ、

桜と桜の隙間から見える星に目を凝らす。


例年と同じく、各サークルが呼び込んだり、掛け声で盛り上がっているのを耳にしながら、………あたしは踵を返した。


戻ろう……動いていないと、誰かと話していないと、
余計なことばかり考える。


そのクセ、ふと一人になりたくなったりして………矛盾に笑ってしまう。




「────おい、サボリ魔」



正面の暗がりから聞こえる声が、そんな失礼なことを言った。