「瑤子………」
電話を切った母親が、瑤子ちゃんに気づいてこちらにやって来た。
「しばらく休み取ってきた。状況が落ち着くまで、家にいるから」
「ありがと………」
いつもの陽気さはなくなって、憔悴したような母親に、
「………今から、郁生とトコのパスポート申請に行ってくる。お母さん達は期限大丈夫だよね?」
「……あぁ………うん、大丈夫……」
「………少し、休んだら」
「……そう……しようかな」
瑤子ちゃんが帰ってきて安心したのか、母親はふらふらと2階へ上がってった。
「………トコ、運転はあたしがするから、一緒に来られる?」
「うん……わかった」
「郁、その間電話掛かってきたらお願いね。何かあったら、トコのケータイに掛けてきて」
テキパキと話す瑤子ちゃんに少しばかりほっとしながら、
────あたしは、ずっと渦巻いている得も言われぬ緊張と強い感覚に、
震えが止まらないでいた………