★    ★


「………トコっ──郁!!」


玄関からバタバタっと音がして、瑤子ちゃんが飛び込んできた。


「瑤子さん………」


「郁───ごめんね、昨日のうちに帰れなくて」


「ううん、瑤子さんありがとう。

学校と仕事は、大丈夫……?」


「こんな時に、そんなこと気ぃ遣わないで。大丈夫だから。お母さんは……?」


「今、父さんと国際電話で話してる。

じーちゃんは………取りあえず、仕事行ったけど、………今日はケータイ離さず持ってるから、『何かあったら、すぐに電話して』って……」


瑤子ちゃんは「そか……」と頷くと、


「取りあえず、二人はこの書類書いて。

二人のパスポート申請に行ってくる。今からなら、年末間に合うから」


「あ……そっか、気が回らなかった、パスポート………瑤子さん、ありがとう」


「───トコ?」


瑤子ちゃんが書類を差し出しながら、あたしを覗き込んだ。


「………顔色、悪い」


「………え………」


「トコ、寝れてないの? 書類書いたら、少し横になる?」


「大丈夫……」