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「………トコっ──郁!!」
玄関からバタバタっと音がして、瑤子ちゃんが飛び込んできた。
「瑤子さん………」
「郁───ごめんね、昨日のうちに帰れなくて」
「ううん、瑤子さんありがとう。
学校と仕事は、大丈夫……?」
「こんな時に、そんなこと気ぃ遣わないで。大丈夫だから。お母さんは……?」
「今、父さんと国際電話で話してる。
じーちゃんは………取りあえず、仕事行ったけど、………今日はケータイ離さず持ってるから、『何かあったら、すぐに電話して』って……」
瑤子ちゃんは「そか……」と頷くと、
「取りあえず、二人はこの書類書いて。
二人のパスポート申請に行ってくる。今からなら、年末間に合うから」
「あ……そっか、気が回らなかった、パスポート………瑤子さん、ありがとう」
「───トコ?」
瑤子ちゃんが書類を差し出しながら、あたしを覗き込んだ。
「………顔色、悪い」
「………え………」
「トコ、寝れてないの? 書類書いたら、少し横になる?」
「大丈夫……」