「トーコに“もう縛られるのやめよう”って言っておいて、………なかなか難しいね」


「郁生くん………」


なんとなく遠くを見る寂しげな瞳に、思わず手を重ねると、


「あ、でも───別に後ろ向きな訳じゃないよ。心配しないでね?」


「……うん」


「………前世(カコ)のことは、もう変えられない。

思い出して辛いことは沢山あるけど、なんとか乗り越えて───顔を上げて、前向きに進むしかないから。

そうじゃないと…………お互いに傷つけあうばかりで、トーコと一緒にいられなくなる」



………ことあるごとに、「ごめん」て謝ってた郁生くんを思い出す。


その度に、前世のことを………今の想いも全てを否定されているみたいで、悲しかった。


でも───そういえば、癖みたいになってた彼の「ごめん」を聞かなくなったのは、いつからだろう?


多分…………そうだ。


『一緒にいよう』って決めた、あの日から………




きゅう……っと握られた手にあたたかさを感じて、あたしは微笑みながら、


「郁生くん………変わったね」


「そう?」