「ごめん………何を言われても、平気な……つもり、なのに………」


こんな、外野から言われたことに、いつまでも心乱されてしまっている自分が情けなくて………


郁生くんが好きで───この人を離したくない。

目の前の彼だけを見つめていれば、本当は、それだけでいいのに………



「トーコさんが謝ること、ないでしょ?」


いつかのように、郁生くんがあたしをふわり抱きしめて、背中をとんとんと撫でた。



ややあって───………


「ねぇ、トーコさん…………トーコ、」


「────」


郁生くんの声に、あたしは彼の胸の中で見上げた。


………今、名前で……


「………聞いて?

誰に何て言われても───トーコのこと、離さない……絶対」


“さん”付けじゃなくて、初めて名前で呼ばれた───それだけで、見上げた彼の顔が涙でぼやける。



「今、トーコを一番苦しめてるのは、なあに?

何に傷ついてるの……?」