……いっ、郁生くん………意地悪………!



あたしは凄い勢いでバクバク鳴り響く心臓に、
思わず座り込んでしまいそうなのを、根性でこらえつつ。

怪我をしないように、慎重にやかんのお湯をポットに移し、ついでに残りで紅茶を淹れた。



もー………まだ、落ち着かないじゃん……

と、取りあえず、コートと鞄、置いてこよう…………




────……2階から降りてくると、

ティーポットとマグカップをトレイに乗せて、運んでくれたらしく、

郁生くんが、ソファーに座って紅茶を飲んでいた。



「あ、トーコさん。紅茶、ありがと」


「………どういたしまして」


郁生くんと離れたソファーに座り、マグカップに紅茶を注ぐあたし。


「………怒ってる?」


……上目遣いも、やめてってば。

まだドキドキが治まった訳じゃないんだから……


「……少しだけ………郁生くん、意地悪」


「ごめんって。もう意地悪しない」


「ほんとにぃ……?

あたし、郁生くんが案外意地悪だなんて、知らなかったなー」