「…………ただいまー……」
真っ暗な我が家に着いたのは、21時近くのこと。
「……家に誰もいなくても、『ただいま』って言うんだ?」
後ろから、クスクス笑い声が追い掛けてくる。
「う……クセだから……」
なんとなく恥ずかしさを感じながら、あたしは荷物を玄関先に降ろした。
「雨戸、外から閉めてきちゃうね」
「あ、ありがと……」
同じく荷物を置いた郁生くんは、いったん玄関から出ていった。
あたしは、リビングの電気をつけて、お湯を沸かしにキッチンへと向かう。
……………住み慣れた我が家なのに……
しかも、今まで二人きりになったことがない訳じゃないんだけど……
「トーコさーん、お風呂沸かしちゃう?」
雨戸を閉め終わった郁生くんが、そう言いながらリビングに入ってきて、
びっくりして、背中が縮こまりながら、
「えっ? ……う、うん」
と返事をすると、
「…………ぷっ」
郁生くんが吹き出して、側にやってきた。