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「────トーコさん……!」
郁生くんの呼び声に、ハッと我に返って、
「………えっ…と…………なぁに?」
「結構前から声掛けてたんだけど………考え事?
………運転、大丈夫なの?」
運転中なあたしがチラッと横目で助手席を見ると、
郁生くんが怪訝そうな顔をしていた。
「………ちゃんと、信じてよー……
高速だって運転したことあるし、
家族旅行の時だって、お父さんと交代で道中頑張ったんだから」
「なんか………ぼーっとしてんだもん」
「………なかなか寝付けなかったんだ、楽し………」
「───もしかして、心配……?」
かぶせるように言われた“心配”の単語に、思わずドギマギし、
「なっ……何が?」
前を向いたまま、聞き返すと、
「………ばーちゃんに、『一緒に行こうかなあ?』って言われた時は、すこーし焦ったし」
「あー…………郁生くんも、焦ったんだ? そうは見えなかったよ?
まあ………大丈夫…だよ───お母さんは……」