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………永遠にも思われるような沈黙の後、
身動ぎ一つ出来ないあたしの頭の上から、静かな声が降ってきた。
「入学式の日……郁生が一緒に来たのは、ばーちゃんで──
『ばーちゃん、若いな。かーちゃん、いくつなんだよ?』って、後でからんだら、
……『母親が自分を20歳で生んでるから』って」
「ばーちゃん、50代後半ってこともちらっと言ってたから、
郁生のかーちゃんを20代始めで生んでるってことになるっしょ」
「そんで……別ん時『こっちで受験とか大変だったんじゃね?』みたいに、郁生と地元の話をしてたら、
『向こうの祖父母は年配』『もう他に家族いない』ってな感じで」
「話をつじつま合わせたら───
5歳上の“イトコ”なんて、存在できない……じゃん?」
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───あたしは、一ヶ谷君の話を黙って聞いているしかなかった。
最後に……ゆっくり区切りながら、一ヶ谷君が問うた。
「トーコさんって……いったい、郁生のなに?
───なんであいつ、“イトコ”だなんて、嘘言ってたんだ……?」