「あっちが文学部と法学部で、その向こうが理学部。
工学部と薬学部は遠いからちょっと…………て、なに?」
説明していると、─── 一ヶ谷君が微笑ましそうな視線で、こちらを見ていた。
「いやー……やっぱトーコさん、いいなー、と思って」
「は……な、なんで」
「俺と二人きりってさ、ほんとは困ってるだろうに、一生懸命でさ」
う………気が進まなかったの、ばれてる……
「一ヶ谷君……あの………」
「俺、一目惚れって初めてだけど、会うたびにやっぱ好きだなー、って思うんだよね。
ちょっとした気遣いとか、こーいう優しいとことか。
───直感、当たるタイプだからさ?」
「……………」
コメントに困って、黙っていると───
「そんな、困った顔しないでよ。
………誰の方を向いてるかなんてさ、始めから解ってるって」
「…………え」
一ヶ谷君が立ち止まり……あたしの手首を捕らえ───