「あのねえ、カナエ……」
「こらカナエ、そんなこと、適当に言わないの」
そんな声がして、カナエの肩にポンと手を置いたのは、
「───きぃこ」
「メールしても電話しても出ないから、探したよ」
「あ、ごめん、マナーモード………」
あたしが鞄の中を覗こうとすると、
きぃこはカナエの腕を引っ張って、こちらを振り向き様に言った。
「カナエ、行くよ。
………柊子、ちゃんと話してきたら?」
「えー、残念。一ヶ谷君またねー」と後ろ髪ひかれてるカナエを連れて、グングン離れていく背中を、
ぽかんと見送りながら、
「……きぃこさんって、よく見えてるよね。
知ってるの?────トーコさんの気持ち」
「え………」
“トーコさんの気持ち”って………
その言葉に、一ヶ谷君を凝視してしまい、
「いやん、そんなに見られると、照れちゃう」
「───もうっ」
乙女ぶりっこする一ヶ谷君に、呆れた声を上げた。
ほんと、頭、いたい………