……大学祭のあの騒ぎの後、郁生くんは勿論未桜ちゃんも、
騒ぎの主・一ヶ谷君から、いろいろ詮索されてたみたいで。
二人とも、一ヶ谷君に「やかましい」と一喝して、知らん顔してくれてたみたいだったから。
あたしは彼の存在も、大学祭の冗談みたいな出来事も、すっかり忘れていたのだ。
一ヶ谷君は、あたしと出会うずっと以前郁生くんとちらっと話した会話から、
『郁生のイトコは教育学部生』と覚えていたらしい。
………その恐ろしい記憶力と、
この広いキャンパスで、偶然あたしに会えるかも分からないのに、その無謀とも言える行動力に驚きつつ。
カナエが面白がってカフェに誘うは、
本人も喜んで子犬のように懐いてくるはで、無下に追い返すことも出来ず……
お茶した後、次の授業があることと、メアドを交換することで、なんとか帰ってもらえたけど───
「次休講だし、キミも一緒にお茶する? 」
「ちょっと、カナエ!」
「いーじゃん、柊子。会いたくてついつい来ちゃうなんて、かわいーじゃん。
あんま邪険にしないの。もしかして優良物件かもよ?」