★ ★
「おーい柊子ー、次休講だってよー」
一般教養棟から教育学部棟に向かっている途中、そんな声に振り返ると、
同じ学科のカナエが手を振りつつ、外階段を降りてこちらにやってきた。
「えっ、そーなの? ………あ、ありがと。
そっかー、ラッキーだけど、無駄に時間あいちゃうなぁ」
カナエが見せてくれた休講情報の写メを確認して、あたしは時計を見た。
「きぃこにもメールしたら、『ゼミのレポまとめるのに、研究室行かない?』って」
「そだね。──あ、うーんとライフセンターで何か買ってからにしようかな。寒くって……」
今来た道を戻るような形で、カナエと歩いていると───
「────トーっコさんっっ♪」
こっ……この声………
恐る恐る振り返ると、そこにいたのは………
「おー、一ヶ谷少年、久しぶり~」
先にカナエが挨拶した。
───そう、大学祭の時に知り合った、郁生くんの友達の“一ヶ谷君”が、
犬コロみたいな笑顔で立っていた。