「トーコさん……?」


どうしてなんだろ……

あんな夢の後で、一人になりたくなかったから?


……ううん、…違う………



「……手……」


「え?」


「郁生くん……手……」


あたしは自分の手を差し出した。


そして、探すように宙をさまよう。


郁生くんが何も言わずに、きゅっと握ってくれて、

ほっと安堵の涙が一粒こぼれた。


「……少し、ここにいるよ」


郁生くんの優しい声に、


「…………き……」


「なに?」


「あたし……好き……」


「えっ?」


「あたし………好き………この……手……」


温かさがじんわり染みて、トロトロと瞼が落ちてくる。


この手、……安心する手……


“懐かしい”手……。